主にゲームと映画

ゲームや映画に関する感想等を書きます。ネタバレはあります。

イニシエーション・ラブ

イニシエーションラブ見ました。とりあえず言いたい事から言うと、正直舐め切ってただけに度肝を抜かれた。

いきさつから話すと、「ラスト五分で全てが覆る」なんて言うけれど、ラスト五分の為に二時間も費やすなんて馬鹿げてると思い、ネットでネタバレを見てしまった(その時は別に見るつもりも無かったし)。しかし後になってじわじわと、そのシナリオはどんな風に描かれているんだろうと気になってきた。

そんなこんなで今回観るに至った。まぁ、「二度見る」なんて宣言されているし、その一度目を簡素に済ませたと考えれば今回は初回にして二度目のようなもの。「作品はネタバレくらってる方が楽しめる」なんて都市伝説もあるぐらいだし軽い気持ちで観てみた。

まず、賞賛すべきは、叙述トリックを映像化したその大胆な手法だろう。
似ても似つかない二人を、脚本と髪型だけで結び付けてしまう強引さは見事。

要するに「堂々としていればバレない」ということなのだろう。実際タネを知っていた自分でさえ、違和感を覚えたのは最初の10分程度で、以降はそんな事気にならなくなったし、前半のシナリオは明確に頭に残りつつ、主人公の見た目だけは都合よく見えなくなっていた。

そして次は良い意味で邦画らしくあった事だ。本作は巧妙な叙述トリックを用いた高度なサスペンスでありながら、その流れに囚われず昭和の雰囲気と、そこから生まれるコメディなノリを貫き、視聴者への分かり易さを重視している。

もっと言えば、「最近流行りの切なくて泣ける恋愛作品の皮を被ったサスペンス」と銘打ってはいるがその皮は本物そっくりではなく着ぐるみの様なものだ。
恋愛作品の要素である男女の接近と駆け引き、衝突と別れはとてもあっさり、且つ記号的に描かれている。

例えば重いシーンの直後に昭和のバラードを流す事で無駄に雰囲気を暗くせず、トリックに対する集中を削がれる事は無い。新しく出会った女性を可愛いと思えば、後は視聴者をハラハラさせる駆け引きや葛藤も無くすんなりとその人に惹かれていく。しかしそのすんなりさこそが見易さを作り出しているのだ。

ラストの答え合わせ的映像も作品としては反則の様な気もするが、そこに分かり易さを重視する日本人らしさや作品の雰囲気よりもエンターテインメントを取る良判断を感じる。

まぁエンターテインメントを優先したからこそのあの昭和な雰囲気作りなのだろうけど、ああいうギャグが許されるノリだからこそ、あの大胆な入れ替わりも受け入れられたのではないだろうか。

 

(2016/04/29)