主にゲームと映画

ゲームや映画に関する感想等を書きます。ネタバレはあります。

ダンケルク

3か月程前だけど観たので感想を書く。

ノーラン監督が好きだったので観たが、今までのサスペンス系とは違う、しかし氏らしい独特の手法や製作の意図はしっかりと伝わる作品だった。

インセプションインターステラー等のCGやSF要素の廃された、良い意味で泥臭い作品。簡潔に言えば戦争の臨場感に全振りしていて、その為に徹底してシンプルを心掛けられていて、その点ではミニマリスト的とも言える。

本作の特徴とも言える3つの視点と時間軸は、やはり最初はややこしくて、前後関係が分かりづらいがそこは最早ご愛敬。視聴後にこういう構造だったのかと知って感心する為にある要素と言っていいのかもしれない。

臨場感を出す数々のエッセンスについて、やはり何といっても「間」の持たせ方が凄い。普通なら長すぎなのかもしれないが、視聴者に息が詰まるを通り越して息苦しさを覚えさせる。そこまでして漸く生まれる臨場感があった。

無限階調のBGMも、緊張や不安が破裂しそうだけどしない、膨らみ続ける事で更に緊張と不安が増すという効果を生み出している。

後は、舞台のほとんどが海上である事もかなり不安やストレスを煽った要因なのでは。どこにも逃げ場や隠れ場は無く、乗っている船が崩れたら終わりという恐怖。そして戦争映画ではあるが、敵と戦うのではなく、逃げる事を目的に据えた事も大きい。敵には勝てないという絶望感を植え付け、視聴者にも感情移入を促す。数ある戦争の場面の中で監督がこれを選んだ理由にも納得。

シンプルさの為に排されたキャラクターという要素。「セッション」でも似た様な事を書いたが本作でもキャラクターのバックグラウンドや個性を抑える事で戦場の臨場感のみに集中できる様になっている。また、それにより見ず知らずであり、偶然その場に居合わせただけで命を共にしなければならない軍人仲間との関係性も飲み込みやすくなっている。